お腹の赤ちゃんとふたりぼっちの夜【2026年8月17日】

産道を広げる処置を受けた、入院初日の夜。

翌朝からは、促進剤で陣痛を起こす予定になっていた。

この夜、私は今日がお腹の赤ちゃんと過ごす最後の夜になると思っていた。

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19:35|ココアを買ってきた

ココアを買ってきた。

気持ちが落ち着かない。
お腹の圧迫感もある。
腰が痛い。

私の痛みなんて、これから出産する人の痛みに比べたら、比にもならない。

そんなふうに、自分の痛みを小さく考えていた。

眠りたいと思った。
でも、お腹の違和感で眠れる気もしない。

今日がこの子と過ごす最後の夜なんだと、急にしんみりとした気持ちになった。

お腹はまだ大きいし、あたたかい。

最後の夜だね。
育ってくれてありがとうね。
幸せだよ。

声をかけながらまた泣いて、夜が明けるまでの時間を数えた。

授かったのも、育てたのも、傷ついたのも、苦しんだのも。
心も体も全部すり減らしてる時は、いつもひとりだった。

でも、お腹の中にもうひとりいたから、ふたりぼっちでおしゃべりしながらやってこれた。

許さないでね。
恨んでいいよ。
ごめんね。
ありがとう。

背負うのもひとりぼっち。

ひとりぼっちになっちゃうよ。

8月18日 0:00|日付が変わった

見回りの看護師さんに対して身体を起こしたら、

「見回りなので大丈夫ですよ」

と言われた。

0:30|産気づいている人の声

うめき声が聞こえてくる。
目が冴える。

産気づいている声だと気がついた。

声にならないうめき声が、定期的に聞こえる。
もう日付が変わっているから、今日生まれてくるのかもしれない。

なんだか少し、自分も力が入った。

私が迎える死産とは真逆だけど、何かできるわけもないのに、何かできたらいいのにと思ってしまった。

奇跡と隣り合わせなんだ。

そういう場所に私はいる。

0:50|ベッドの柵に身体を寄せて

お手洗いへ行く。

入院するのも初めてなので、病院はもっと怖いものだと思っていた。
産院だから、普通の病院とは雰囲気が違うのかな。

お腹の圧迫感を常に感じている。

朝には促進剤で陣痛を起こすのだけれど、どのくらいの痛みなんだろう。

どのくらいで出てきてくれるんだろう。

わからないことだらけ。

お腹の下の方が張っていて硬い。
たまにポコポコする。

動いているのかな。

自然と瞼が下がるまで、ぼーっとしているしかない。

なぜか右側だけ、身体をベッドの柵にぴったりとくっつけて横になっている。

左側は、人がひとり横になれるくらいのスペースも空いている。

不自然な格好だな。

右側が埋まっているのが心地よいのかもしれない。
理由はわからないけれど、これがよかった。

誰かが隣にいるような気持ちになるのかな。

先生も看護師さんも、

「旦那さんは?」
「パートナーさんは? 来てくれていないの?」

と何度も聞いてくれた。

ひとりです。

と何度も答えた。

今日も明日も明後日もひとりです。

これから受け取る死産届も、私だけで受け取ることになる。

大半の人は、分かち合える誰かがそばにいるんだろうな。

1:30|「お出かけしましょうね」

少しだけ眠れそうな気がしてきた。

泣き疲れて瞼が重いのもある。
目を閉じたり開けたり。

もうお外に出てくるのよ、今日だよ。
お出かけの準備はできましたか。
お出かけしましょうね。

お腹に話しかけてる。

あなたのお鼻は骨がしっかりあってね、お父さん似だよ。
骨格もしっかりしてるなって私は思ってた。
これもお父さん譲り。

私の好みの話になっちゃうけど、お父さん似のお鼻は誇っていいよー。
綺麗なお鼻の形してるんだよ。

私に似ているところはどこかあるのかなぁ。
強い身体かなぁ?

首の後ろのむくみも正常だった。
染色体のことがわかるまでは、順調に育ってくれていると思っていた。

でもごめんね。
お外に出てきた時には、お父さんには会えないね。

ごめんね。
寂しいよね。
会いたかったよね。

でも私がいるからね。

お母さんだよ。
わたしがあなたのお母さんだよ。

妊娠してからの時間を思い出す

なんだか色々思い出してしまう。

病院へ通った日々。

お腹がチクチクして、着床したのかなと感じた日。

妊娠が確定した日。

宇宙みたいにキラキラ輝く胎嚢の輪っかが見えた日。

小さなまん丸が人の形になってきて、尻尾が生えていたのを見た日。

心臓の音を聞いた日。

手足が見えて、鼻の骨も見えた日。

高齢出産のリスクは常に意識していた。
染色体異常の可能性が高くなることも。

喜びを感じた日はあったけれど、安心を感じたことはなかった。

つわりキツかったな。
最終的に−5kg。

今もまだつわりがあるのが、苦しさでもある。

生きてるよーって、大きくするぞーって、身体が反応しているんだなと思うから。

涙が止まらないな。

本当に夜が長い。

この記事を書いた人

不妊治療、妊娠と喪失、子どもを迎えるための準備、仕事、資格、旅。
選んで、つくって、生きていく途中の記録を、YACONOMAに残しています。

※このブログでは、当時のメモや写真を見返しながら、過去の出来事も時系列に沿って記録しています。
記事の公開日と、書いている出来事の日付が異なる場合があります。

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