8月17日。
今日は、羊水検査の結果を聞く日。
結果によっては、そのまま入院することになっている。
私はもう、今日ここから数日間、家には帰れないだろうと思っていた。
8:45|母に送られて病院へ
母に病院まで送ってもらった。
道中は、他愛もない話をしていた。
母が言った。
「すぐに出てきちゃうといいね」
悲しくなった。
でも、
「そんなこと言わないで」
とは言えなかった。
私も私の感情の整理がついていなかったから。
母が悪意があっていったことではないのはわかっていたけれど…。
今日は羊水検査の結果を聞く。
そして陽性だったら、
私はそのまま入院する。
赤ちゃんを産むために。
病院には少し早く着いた。
入口へ向かう妊婦さん。
夫婦で歩いている人。
何組か見かけた。
私とは、ここへ来る意味が違う人たちなんだなと思った。
同じ産婦人科なのに。
同じようにお腹に赤ちゃんがいるのに。
これから向かう場所は違う。
そんなことを考えていた。
9:15|羊水検査の結果を聞く
診察という名の、結果確認。
診察室へ入る前、年配の看護師さんが私を見つけて言った。
「ひとりなのね」
同意書。
入院。
会計。
これからのことについて説明を受ける。
まだ結果を聞いていないのに。
もう、陽性だと言われているのと同じだなぁ。
そう思った。
改めて、自分に言い聞かせる。
今日、このまま入院するんだ。
診察室へ入った。
先生から、先に出ている羊水検査の結果を聞いた。
21トリソミー陽性。
確定した。
わかっていた。
覚悟もしていた。
NIPTで陽性と聞いてから、
ずっとこの結果を想像していた。
それでも、実際に確定したという言葉を聞くことと、
想像していたことは違った。
私は、そのまま入院することをお願いした。
また「ひとりです」と答える
先生は何度か、
彼のことを聞いてくれた。
「旦那さんは?」
「ひとりです」
「ひとりで来ました」
7月28日にNIPTの結果を聞いた日も。
8月7日に羊水検査を受けた日も。
そして今日も。
私は何度も、
同じことを答えている。
ひとりです。
この日も、
私はひとりだった。
「次」の話をする
先生と、少しだけ次の治療の話をした。
「受精卵は残っているの?」
そう聞かれた。
凍結している胚が残っていること。
37歳のときに凍結した未受精卵も残っていること。
次に治療をするなら、PGT-Aについてきちんと考えたいと思っていること。
そんな話をした。
「次」
という目標というか、希望しか私には縋るものがなかった。
本当に「次」を迎えられるかはわからないけれど。
9:30|40万円を先に支払う
入院する前に、会計をすることになった。
金額は、
40万円。
先払いだった。
支払いを済ませたあと、
少し涙が出た。
これから入院する。
これから、
この子を産む。
その前に、
40万円を支払う。
全部現実に起きていることなのに、
どこか現実ではないような気がした。
淡々と手続きをする。
お金を払う。
病室へ行く。
その一つひとつが、
自分とは別の誰かに起きている出来事みたいだった。
9:45|病室へ

看護師さんが来た。
病室へ案内される。
ここから、人工死産のための入院が始まる。
受付のような場所に座っていると、
あちこちから赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
生まれたばかりの赤ちゃんの声。
私はこれから、お腹の赤ちゃんを産むためにここにいる。
同じ産婦人科。
同じ「出産」。
でも、私がここにいる理由は違った。
そしてこのあと、
赤ちゃんを産むために、
産道を広げる最初の処置が始まった。


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